高校受験を終えて
高校受験も終わって、晴れて高校生になって新しい生活も始まっていると思います。高校生活をエンジョイしたいと思うだろうし、エンジョイしてもらいたいです。でも、あなたの中学校3年間がきっと本当にあっという間であったのと同じように、エンジョイしようがしまいが、高校3年間も本当に「秒」で終わります。
高校受験が終わってすぐに大学受験の話をするのは気が引けますが、大学進学を少しでもお考えであるならば、どうかこれから申し上げることに少しでもよいので耳を傾けていただきたいです。
大学進学に向けて
現行の大学入試には、一般入試(学力試験が課される試験です)に加えて、総合型選抜、学校推薦型選抜と呼ばれる種類の試験があります。総合型選抜・学校推薦型選抜による大学入学者の割合は、近年増加傾向にあり、2023年度入試では私立大学入学者の58.7%が総合型選抜・学校推薦型選抜を利用して大学に入っています(国立大学は18.3%、公立大学は30.1%が総合型選抜・学校推薦型選抜を利用して大学へ入学。国公立大学も総合型選抜・学校推薦型選抜による入学者割合が年々増加しています。)。私大入学者の半数以上が総合型選抜・学校推薦型選抜であることに加えて、総合型選抜・学校推薦型選抜は年内に合否が決まる、難度の高い共通テストという試験を受ける必要がない(国公立大学の場合は共通テストが課せられる学校推薦型選抜もあります)という受験生にとってのメリットもあり、総合型選抜・学校推薦型選抜の人気は高まっており、この試験を「受ける」とか「受けない」という選択の問題ではなく、大学進学を目指す多くの受験生にとって「受けるべき」と考えることが合理的判断になりつつあります。
総合型選抜・学校推薦型選抜とはどのような試験なのか
総合型選抜・学校推薦型選抜は、①調査書(=評定平均値)、②志望理由書、自己推薦書、活動報告書、事前課題レポートなどの書類審査、③面接・プレゼンテーション、④小論文、⑤グループディスカッションなどが試験として課せられ、学力に留まらない多面的な人物評価によって選抜が行われる試験です。簡単に言えば、大学側がほしいと考えている受験生を選抜することを目的とした試験です。
総合型選抜・学校推薦型選抜においては、将来の「志」に基づいて受験生が入学後も大学において学び、研究を行う(=大学は教育研究機関です)素養があるかどうかが評価の対象となります「うちの大学はこういう人が欲しいです」という大学側からのメッセージがアドミッション・ポリシーというものになります。アドミッション・ポリシーに適合する受験生を獲得することが、総合型選抜・学校推薦型選抜の目的です。したがって、受験生の「志」、将来のキャリア設計、大学で学ぶ明確な目的や問題意識があることが前提となります。そうした「志」を有していることを確認するために、大学は活動実績の報告を求めます。「将来、こうしたい!」、「これを成し遂げたい」という受験生の意志を確認するために、その「志」に向けて高校生として具体的に何に取り組み、活動をしてきましたかと問われることになります。
「志なき者は、去れ」
志とは高校生のみなさんが将来的に社会に出たときに、世のため人のため、あるいは切実な自分の問題意識から、必ず成し遂げたいと強く望む対象を持ち、それを果たそうとする意志が志です。端的に述べれば、総合型選抜・学校推薦型選抜は「志なき者は、去れ」という試験です。出願書類として一等重要な評価対象となる志望理由書も、大学への志望とともに受験生の将来の「志」が問われます。「志」がなければ、どんなに「大学で学びたいです」と声高に叫んでも大学には入れてもらえないのです。したがって、将来の「志」を持つことは総合型選抜・学校推薦型選抜の受験にとって絶対的に不可欠だといえます。
高校1年生のみんなにしてもらいたいこと
将来的に大学進学を考えているならば、総合型選抜・学校推薦型選抜も視野に入れておくべきです。さらに、総合型選抜・学校推薦型選抜を受験するにはあなたの「志」が不可欠です。したがって、高校1年生から少しずつ、自分の将来のこと―将来何をして生きていきたいのか、自分は将来何をするべきなのか―を考えていただき、ご自身の「志」を明らかにしていってもらいたいのです。「将来何をしたいかなんて、まだ全然わからない」といわれる方もいるかもしれません。わからなくてもいいと思います。しかし、そのように言って何も考えないというのは、思考の怠惰だと思います。全然わからなくていいのですが、だからといってそれを理由のようにして何も考えないということは問題だと思います。
知らないことには出会えない
「将来何をしたいかなんて、まだ全然わからない」という人は、考える材料がないからだと思います。知らないことには出会えません。だから、まずは自分が現段階でおもしろいと思えることや興味のあることに今よりも少しだけ首を突っ込んでみましょう。興味関心のある分野の本などを読んだり、何らかのイベントに参加してみたり、自分だけの興味の種を育てていけるとよいと思います。慶應義塾大学SFCのAO入試(=1990年、AO入試を日本で初めて開始したのがSFC。30年以上にわたるその審査の蓄積やノウハウは他大学の追随を許さないものがあり、今では日本でもっとも難しい総合型選抜の一つ。)などを筆頭に難関大学の総合型選抜・学校推薦型選抜の合格者は、そのほとんどが高校1,2年生から自分の興味関心にしたがっていろいろな活動に取り組んだり、行動をしています。特別に試験を意識して動いているのではなく、自分のやりたいことや取り組みたいことを、さまざまな活動に参加しながら考えています。将来やりたいことが決まってから動き出すのではなく、動きながらやりたいことを明確にしていくというスタイルが望ましいと思います。だから、「将来やりたいことなんてまだわからないし、今は何もできない」という態度や姿勢ではなく、やりたいことを探すために、少しでも興味関心のある対象や今やってみたいことに自分から近づいていく、動いてみるというスタイルがよいと思います。自分がそもそも知らないことには出会うことすらできません。みなさんのしたいこと、将来の「志」を見つけるためには、まずは世の中に何があるのかを知るところからがスタートです。
部活動、たのし~!
部活で青春、いいと思います。でも、部活動で疲れ果てて何も考えないし、部活動しかしていないというのは高校生の経験として貧しいと思います。大学入試のためにというよりは、自分の将来のために、自分の志を見定めていく活動もしていくべきです。総合型選抜・学校推薦型選抜の観点からいえば、部活動は全国大会に出場するなど一定以上の成果を出さなければ、評価の対象になりませんので、そこに時間のすべてをオールインするのは問題です。嫌な言葉に聞こえると思いますが、部活動はあなたの趣味です。楽しくてあたりまえだし、楽しんでもらいたいです。しかし、将来のことを考え、行動する時間も確保してもらいたいのです。
具体的に何をすれば?
まず、「自分が将来何をして生きていきたい人間なのか」、「自分は何のためにこの世に生まれてきたのか」という問いを自分の背中につねに張り付けて生活を始めるところからスタートです。背中に張り付いていればいいので、四六時中そのことについて考えなさいということではありません。しかし、折に触れ、その問いに向き合えるようにしておく必要はありますし、その問いを持ってさまざまな興味関心にしたがって行動をしていくべきです。
難関大学の総合型選抜・学校推薦型選抜の合格者の多くは、まずは好きかどうかもわからないけれど、やってみる、チャレンジしてみるということで、さまざまな行動をしています。活動実績というとボランティアとすぐに高校生の多くがいいますが、そうではありません。自分の将来のために、志にもとづいた活動が積み上げられていればそれは何であれ活動の実績です。好きな作家の小説を全作読む、映画を100本見るというように何らかの興味関心の対象にどっぷりつかるところから始まってもいいですし、大人に交じって何らかの活動をしてみるということもしてもらいたいです。積み上げるべき活動実績は、入試要項に記載されている場合もあるので、それらを見て活動に取り組んでもよいと思います。学校の探究の授業もあるかもしれませんが、それはあくまで制度として学校で実施されており、本質的にみなさんが自発的、主体的に取り組んだといえるかどうか疑問です。探求はあくまできっかけであり、そこからあなたが自分でどう動くかが大切です。
活動実績は高校3年生からでは積み上げることはできない
受験生となった高校3年生になってから、総合型選抜・学校推薦型選抜の対策として、何らかの活動に取り組んだり、課外活動を始めたりするというのでは遅すぎますし、試験のための付け焼刃的活動にしかなりません。また、高校1,2年生からいろいろと取り組んできた人に勝てるはずがありません。多くの受験生が高校3年生になってから総合型選抜・学校推薦型選抜の対策をしたいといいますが、それでは遅すぎるのです。高3の夏になってから慌てて総合型選抜・学校推薦型選抜の対策をしようとする人もいますが、「志」がなければ志望理由書すら書けず、出願すらおぼつかないのです。だから、高校1年生からスタートしましょう、動きましょう。とはいえ、最初は試験を意識する必要はありません。「志」を見定めるために、一歩踏み出して動いて見ること―これが高校1年生のうちからできることですし、行うべきことだといえます。
高校1年生のうちに取り組んでおくべきこと
①評定平均値の確保(総合型選抜・学校推薦型選抜においては、規定の評定平均値を得ていることが出願条件になっている試験もあります)
=要するに、定期テストできっちり点数を取っていきましょうということです。
②将来の「志」を見定めるための活動
=自分の興味関心にしたがって何ができるか、何をしたいのかを考えて動いてみる。
大学などが行う高校生向けのイベントなども毎年多数行われております。
➂ものを書く練習を少しずつしていこう
総合型選抜・学校推薦型選抜では、志望理由書課題やレポート課題、小論文試験などが課せられます。高3になって慌てて取り組んでも、ものを書く力はすぐに身につくわけではありません。高校1,2年生から少しずつ取り組んでいきましょう。潜龍舎では月1でよいので、小論文課題に取り組んでいただくことを強く推奨しております。
潜龍舎の小論文対策指導を3年間受け続けて、慶應義塾大学に合格するお話