
大学入試の小論文に出題されている本を知っているか?
高校1・2年生のみなさん、本を読んでいるだろうか。
「読書? いや、忙しいんで(笑)」
部活もある。勉強もある。友達とも遊びたい。スマホもいじりたい。動画も見たい。まあ、忙しいのはわかる。私たちが高校生の頃だって、いや、いつだって、「最近の若者は本を読まないし、物を知らない!」と常々、若者は批判されてきた。
しかし、大学進学を考えているのであれば、ちょっと耳を貸してほしい。
「ちくまプリマー新書」という新書シリーズを知っているだろうか。
筑摩書房から出版されているこのシリーズ、実は大学入試の小論文試験で、課題文として採用されているのだ。
「ちくまプリマー新書」大学入試小論文・課題文出題実績一覧
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大学・学部学科 |
入試年度・方式 |
書籍名・著者 |
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大分大学 教育学部 初等中等教育コース |
2026年度・後期 |
広田照幸『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』 |
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宮崎県立看護大学 看護学部 看護学科 |
2026年度・前期 |
榎本博明『自己肯定感は高くないとダメなのか』 |
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宮崎県立看護大学 看護学部 看護学科 |
2026年度・後期 |
村上靖彦『客観性の落とし穴』 |
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大阪産業大学 国際・経済・経営・情報デザイン等7学部 |
2026年度・資格取得者一般 |
榎本博明『自己肯定感は高くないとダメなのか』 |
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茨城大学 教育学部 国語選修 |
2025年度・前期 |
中沢新一『古代から来た未来人 折口信夫』 |
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琉球大学 人文社会学部 人間社会学科 |
2024年度・前期 |
山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか? 相対主義と普遍主義の問題』 |
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大阪教育大学 教育学部 教育協働学科 教育心理科学専攻 |
2024年度・前期 |
桐光学園/ちくまプリマー新書編集部編『何のために「学ぶ」のか』(鷲田清一の文章) |
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北海道教育大学 函館校 国際地域学科 地域教育専攻 |
2024年度・前期 |
石田光規『「人それぞれ」がさみしい』 |
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岐阜大学 医学部 看護学科 |
2024年度・後期 |
石田光規『「人それぞれ」がさみしい』 |
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愛知教育大学 教育学部 教育支援専門職養成課程 福祉コース |
2024年度・前期(総合問題) |
宮本節子『ソーシャルワーカーという仕事』 |
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鳥取大学 医学部 保健学科 |
2024年度・後期 |
『何のために「学ぶ」のか』(外山滋比古の文章) |
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岩手大学 人文社会科学部 人間文化課程・地域政策課程 |
2023年度・後期 |
遠藤まめた『みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』 |
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北里大学 看護学部 看護学科 |
2023年度 |
好井裕明『他者を感じる社会学』 |
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龍谷大学 経済学部 |
2023年度・総合型選抜 |
広田照幸『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』 |
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宮崎大学 医学部 看護学科 |
2022年度・後期 |
『何のために「学ぶ」のか』(鷲田清一の文章) |
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金沢大学 人間社会学域 法学類 |
2020年度・後期 |
佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』 |
具体的な例を挙げてみよう。
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2024年度 北海道教育大学 教育学部函館校
石田光規『「人それぞれ」がさみしい』 -
2024年度 岐阜大学 医学部看護学科
石田光規『「人それぞれ」がさみしい』 -
2024年度 大阪教育大学 教育学部
山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?』 -
2025年度 産業医科大学 医学部医学科
山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?』
いずれも実際の小論文試験で出題された書籍だ。
興味深いことに、教育学部だけでなく、医学部や看護学科でも採用されている。
さて、ここで考えてほしい。
大学入試の小論文に出題されるような本を、高校1・2年生のうちから読んでおくことには意味があると思わないだろうか。
もちろん、ある。
しかし、潜龍舎がこのシリーズを勧めたい理由は、それだけではない。
そもそも「ちくまプリマー新書」とは?
「ちくまプリマー新書」は、2005年に創刊された新書シリーズである。
筑摩書房は、このシリーズを「さいしょの新書」と位置づけている。
「プリマー(primer)」とは入門書という意味であり、若い読者にも理解できるように、さまざまな学問的テーマをわかりやすく解説していることが特徴だ。
つまり、もともと高校生のような若い世代が読むことも想定されている。
扱われているテーマも実に多彩だ。
哲学、倫理学、社会学、心理学、歴史学、教育学、自然科学……。
世の中のさまざまな問題について、専門家が高校生にもわかる言葉で説明してくれる。
ただし、「高校生向けだから内容も簡単なのだろう」と思ったら大間違い。
わかりやすいことと、考える内容のレベルは、まったく別の話だ。
高校生でも理解できる言葉で、本格的な学問的問題を考えることができる。これが、このシリーズの魅力だと思う。
高校生に足りないのは「考える経験」ではないか?
さて、なぜ高校1・2年生にこのシリーズを読んでほしいのか。
それは、大学入試の小論文で必要になるのが、単なる知識ではなく、自分の頭で考える力だからだ。
小論文対策というと、「文章の書き方」ばかりを気にする高校生がいる。
序論、本論、結論。接続詞の使い方。文章構成のパターン。
もちろん、それらも大切だ。
しかし、そもそも自分がどう考えるべきなのかも、自身が何を考えているのかもわからないのに、文章の書き方だけを覚えて何になるのだろうか。
中身のない文章を、立派な構成にしたところで、中身がないことに変わりはない(笑)。
小論文を書くためには、まず考えなければならない。
たとえば、ちくまプリマー新書のなかには、山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?―相対主義と普遍主義の問題』という本がある(ちなみに2023年度の慶應義塾大学 文学部 自己推薦入試の総合考査Ⅱではこの本から出題されたよ)。
「みんな違ってみんないい」。
何となく素晴らしい言葉に聞こえる。
しかし、本当にそうなのだろうか。
価値観が人によって違うのなら、どんな意見でも正しいことになるのか。差別的な考え方も、一つの価値観として尊重するべきなのか。異なる意見の間で、何が正しいのかを判断することはできないのか。
こうして考えてみると、普段は何となく受け入れている言葉にも、検討しなければならない問題が含まれていることに気づく。
こうした問題に気づき、立ち止まり、自分で考えてみる。
高校生の段階で、このような経験を積んでほしいのである。
読書は「志」を考えるきっかけにもなる!
さらに、総合型選抜・学校推薦型選抜を考えている高校生にとって、読書には別の大きな意味がある。
それは、自分自身の問題意識を発見するきっかけになるということだ。
総合型選抜・学校推薦型選抜では、大学で何を学びたいのか、将来どのような問題に取り組みたいのかが問われる。
ところが、高校生にそうしたことを尋ねても、「まだわかりません」という答えが返ってくることは珍しくない。
まあ、そりゃそうだろう。
高校生の段階で、自分の将来について明確な考えを持っている人ばかりではない。
しかし、わからないからといって、何も考えなくてよいということにはならない。また、自分の将来について考えられないのは、考える材料がないからだ。
そもそも、自分がどのようなことに関心を持っているのかは、さまざまな問題に出会い、考えてみなければわからないのだ。
本を読んで、これまで知らなかった社会問題に出会う。
自分が当然だと思っていた考え方に疑問を持つ。
著者の主張に納得できず、「いや、それは違うんじゃないか?」と考える。
そこから、もっと詳しく調べてみたくなる。
こうした経験の積み重ねが、自分自身の問題意識を育て、やがて大学で学びたいことや、将来取り組みたいことにつながっていく。
志望理由書を書く直前になって、慌てて「社会問題」をインターネットで検索したり、AIにまとめさせる。
そんな付け焼き刃の対策をするよりも、じっくりと本を読むことにはよほど意味がある。
ただし、本を読んだだけで賢くなるわけではない!
ここは誤解してほしくない。
「ちくまプリマー新書」を読めば、自動的に小論文が書けるようになるわけではない。
また、読んだ本からそのまま入試に出題されることを期待するのも間違いだ。
何より、本に書いてあることを、そのまま正しいと思い込んでしまうのでは意味がない。
著者だって人間である。間違えることもあるし、その主張に反論の余地があることもある。
だからこそ、読書をする際には、次の3つを意識してみてほしい。
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著者は何を問題としているのか?
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著者はどのような根拠に基づいて、何を主張しているのか?
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自分はその主張について、どう考えるのか?
できれば、本を一冊読み終わったら、最も印象に残った問題について、300字程度で自分の考えをまとめてみるとよい。
うまく書けなくても構わない。
大切なのは、著者の考えを理解したうえで、それについて自分自身で考えてみることだ。
これを繰り返すことが、小論文に必要な読解力、思考力、論述力を養うことにつながっていく。
高校1・2年生よ、とりあえず一冊読んでみろ!
高校1・2年生のみなさん。
大学入試まで、まだ時間があると思っているかもしれない。
しかし、大学入試に必要な力のすべてが、高校3年生になってから短期間で身につくわけではない。
特に、自分で問題を発見し、考え、自分の言葉で説明する力は、日々の積み重ねによって育っていくものだ。
そのために、まずは一冊、本を読んでみてほしい。
最初から難しそうな本に挑戦する必要はない。
「ちくまプリマー新書」の中から、自分が少しでも面白そうだと思える本を選べばよい。
そして、その本を読みながら考えてみてほしい。
自分は何に疑問を持ったのか。何に納得できなかったのか。もっと知りたいと思ったことは何なのか。
そうした小さな疑問や関心が、大学での学びや、将来の「志」につながっていくかもしれない。
最後に、一つ。
大学入試の小論文に出題されるから、本を読むのではない。
日頃から本を読み、自分の頭で考えてきた人こそ、小論文試験や総合型選抜にも対応できるようになる。
高校1・2年生よ、スマホを少し置いて、本を開いてみようじゃないか。
案外、面白い世界が広がっているかもしれないよ。
スマートフォンの画面をのぞいているだけでは、君は1mmも進歩できない。
参考資料・出題実績
- 筑摩書房「ちくまプリマー新書」公式サイト
- 北海道教育大学・2024年度小論文出題状況(河合塾Kei-Net)
- 岐阜大学・2024年度小論文出題状況(河合塾Kei-Net)
- 大阪教育大学・2024年度小論文出題状況(河合塾Kei-Net)
- 産業医科大学・2025年度小論文出題状況(河合塾Kei-Net)





