
・2026年度 慶應義塾大学 文学部 自主応募制による 推薦入学者選考 総合考査 模範解答
・2025年度 慶應義塾大学 文学部 自主応募制による推薦入学者選考 総合考査 模範解答
・2024年度 慶應義塾大学 文学部 自主応募制による推薦入学者選考 総合考査 模範解答
慶應義塾大学 文学部の自己推薦入試にて合格を目指している高校生へ。
まず最初に言っておきたいことがあります。
総合考査Ⅰと総合考査Ⅱは、同じ「小論文」として勉強しないほうがいいです。
どちらも文章を読んで考える試験ではあります。でも、問われている能力がかなり違います。かなり乱暴に言えば、
総合考査Ⅰは「筆者の頭の中を正確に再現する試験」。
総合考査Ⅱは「筆者から渡された問いを、自分の頭でさらに考える試験」。
この違いを理解するところから、慶應文学部の対策は始まります。
総合考査Ⅰ――「私はこう思う」はいらない
総合考査Ⅰでは、長めの課題文を読み、本文中の考え方や論理を説明する問題が中心です。ここで大切なのは、自分の意見を書かないこと。
「私は能力主義には反対です!」などと元気よく主張しても、設問が聞いていることに答えていなければ意味がありません。
2026年度では、能力主義について、なぜ現在の評価基準に問題があるのかを説明する問題が出ています。潜龍舎の模範解答では、
能力には本人が努力して獲得したものだけでなく、遺伝など本人には制御できない側面もある
↓
その能力差は、人間としての価値の差ではない
↓
ところが社会は、その能力差を評価や報酬の差へ結びつける
↓
さらに大きな経済的・社会的格差を正当化してしまう
という論理を整理しています。 2026年度総合考査I 模範解答
大切なのは、「能力主義はよくない」と結論を書くことではありません。
なぜ問題なのか。その「なぜ」を、本文の論理にしたがって説明することです。
キーワードを拾っただけでは解けない
総合考査Ⅰでありがちな失敗があります。
本文中に、
「能力主義」
「偶発的な差異」
「自尊」
「評価上の平等」
などの重要そうな言葉を見つける。
そして、それらを答案に全部入れる。
でも、
言葉を並べただけでは説明になりません。
2025年度も同じです。
この年では「強い責任」と「弱い責任」という考え方が登場します。
ここで、
「強い責任=責任感が強い」
「弱い責任=責任感が弱い」
と理解してしまったら、かなり危険です。
本文で問題になっているのは責任感の強弱ではなく、
「責任をどのように果たすと考えるか」
という責任観の違いです。2025年度総合考査I 模範解答
「強い責任」では、人間を自律的で独立した主体として考える。
だから、
自分で選んだ
→自分で行動した
→自分一人で責任を負う
となる。
一方、「弱い責任」では、人間は他者との関係の中で生きていて、一人では果たせない責任もあると考える。
そこで、
自分だけではできない
→他者を頼る
→他者の力を借りながら責任を果たす
という発想が可能になります。2025年度総合考査I 模範解答
ここまで理解して初めて、「二つの責任の違い」が説明できます。
総合考査Ⅰで必要なのは「論理の矢印」
だから、課題文を読んだときには、
「重要語に線を引こう!」
だけでは足りません。
むしろ、
AだからB。
しかしC。
そこでD。
という流れを探してください。
2026年度なら、
一元的な能力主義
→敗者には「絶望」
→勝者には「退屈」
→原因は同じ一元的な評価基準
→だから評価基準を多元化する
→多様な生き方を認める
→自尊が可能になる
→人々が対等に生きられる
という流れになります。 2026年度総合考査I 模範解答
総合考査Ⅰとは、
本文に書いてある言葉を探す試験ではなく、本文の「説明の理屈」を組み直す試験
だと考えてください。
外国語訳も、実は「国語」の力が必要
総合考査Ⅰでは外国語訳もあります。
ここで、
「難しい日本語が出た! 難しい英単語を知らない!」
と焦る必要はありません。
2026年度の「能力主義」を例にすると、meritocracyという単語を知らなくても、
「人を能力によって評価すること」
と日本語で言い換えれば、
judge people by their abilities
と表現できます。 2026年度総合考査I 模範解答
つまり、
日本語を理解する
→簡単な日本語へ言い換える
→自分が使える外国語で表現する
という順番です。
逐語訳大会ではありません。
まず意味を理解する。
これは設問1・2とまったく同じです。
総合考査Ⅱ――今度は「あなたはどう考える?」
では総合考査Ⅱ。
こちらでは一気に性格が変わります。
比較的短い文章を読み、その問題を受けて320〜400字程度で自分の考えを書きます。
だから今度は、「筆者はこう言っています」だけでは足りません。
そこから、「では、自分ならどう考えるのか」へ進む必要があります。
総合考査Ⅱは「当たり前を疑う」問題が多い
総合考査Ⅱの過去問には、かなり特徴があります。
一見すると良いもの。
一見すると悪いもの。
それを、
本当にそうなの?
とひっくり返してきます。
2025年度ではAIを使った短歌制作が題材になりました。
AIを使えば、多くの表現を一気に生成できます。
便利です。
速いです。
「じゃあAIを使ったほうがいいじゃん」
となりそうです。
でも、そこで問題になるのが、
創作の価値は「完成品を早く作ること」だけなのか
という問いです。
潜龍舎の模範解答では、試行錯誤しながら言葉を探す過程で、
「自分は何を感じたのか」
「何を伝えたかったのか」
を理解していくことにも価値があると考えています。
AIを「壁打ち相手」として使うことはできても、試行錯誤そのものまで任せれば、創作を通して自己を理解する機会を失うかもしれない。
つまり、
AIは良い/悪い
という話ではありません。
AIを使うことで何が得られ、何が失われるのか。
そこまで考えることが必要です。
2026年度――「弱さ」は本当にマイナスなのか
2026年度の総合考査Ⅱは「弱いロボット」がテーマです。
普通なら、
強い=良い。
弱い=悪い。
と思いますよね。
でも、「弱いロボット」は、自分ではゴミを拾えない。
だから周囲の人が、
「仕方ないな」
と拾ってくれる。
つまり、
弱さが他者の行動を引き出す
わけです。
潜龍舎の模範解答では、日本に来たばかりで日本語を十分に話せない外国人を例にしています。
日本語が話せない。
でも、それを見た日本人が身振りや簡単な英語で助ける。
そこから交流が生まれる。
さらに重要なのは、
「日本語が話せない」という弱さは、その人自身の固定的な性質ではない
という点です。
外国人も母国なら問題なく生活できる。
逆に日本人も外国へ行けば「できない側」になります。
だから弱さとは、
人そのものに属するのではなく、環境との関係から生じることがある。
そして、その弱さが人と人をつなぐことすらある。 2026年度総合考査II 模範解答
非常に慶應文学部らしい問題だと思います。
総合考査Ⅱで最も難しいのは「具体例」ではない
こういう問題を見ると、
「具体例を思いつかなきゃ!」
と思います。
でも、本当に難しいのは、その前です。
何を論点にするか。
2026年度なら、
「弱い人も大切にしましょう」
では弱い。
そうではなく、
弱さはその人自身の性質なのか。
弱さは環境との関係から生まれるのではないか。
弱さが他者との関係を生み出すことはないか。
という問いを立てる。
そこから具体例を探します。
つまり、
具体例を思いつく
→何となく意見を書く
ではありません。
問いを立てる
→主張を決める
→その主張を説明できる具体例を探す
です。
総合考査ⅠとⅡでは、勉強法も変えよう
慶應文学部を受けるなら、対策を次のように分けるとよいでしょう。
- 総合考査Ⅰでは、段落ごとの一文要約、重要概念の定義、対立関係・因果関係の整理、240〜300字への圧縮、外国語への「意味による言い換え」を練習する。
- 総合考査Ⅱでは、本文の問題提起を一文で整理し、「本当にそうか?」「逆から見ると?」「別の場面では?」と問いを作り、自分の主張→具体例→理由というプロットを作る練習をする。
- 両方に共通して、模範解答を暗記しない。 Ⅰなら「なぜこの説明になるのか」、Ⅱなら「どうやってこの論点と具体例を思いついたのか」を逆算して分析する。
慶應文学部で必要なのは「知識量」より「概念を動かす力」
過去問には、
贈与。
相互扶助。
物語。
権威。
責任。
能力主義。
自由。
多様性。
客観性。
AI。
弱さ。
と、さまざまなテーマが登場します。
全部事前に勉強しておく?
無理です(笑)。
でも、それで構いません。
必要なのは、
初めて見る概念を理解する。
似ている概念を区別する。
AからBへ進む理由を説明する。
一見正しい考えを疑ってみる。
抽象的な概念を別の具体例へ応用する。
という力です。
総合考査Ⅰは、
「筆者がどう考えたか」を正確に再構成する試験。
総合考査Ⅱは、
「筆者から渡された問いを、自分ならどう考えるか」を構成する試験。
この違いを意識してください。
そして、どちらにも共通して言えることがあります。
いきなり書かない。
Ⅰなら、まず論理を整理する。
Ⅱなら、まず問いを立てる。
それから書く。
慶應義塾大学 文学部の総合考査は、まさに、
「考えてから書く」力が試される入試
です。
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